非線形拘束における持続応力 (Sustained Stresses and Nonlinear Restraints) - CAESAR II - ヘルプ

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日本語
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CAESAR II
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CAESAR II Version
13

コンピュータを用いた配管の応力解析プログラムが非線形拘束問題に取り組み始めた 1970年代の後半から、持続応力の適切な計算方法が課題として検討されています。既存の配管規格は、すべての解析が厳密に線形性を元にして基準の体系を構築しており、この課題に対してほとんどガイドラインらしきものはありませんでした。

この問題は、規格が配管を持続荷重に分けて解析することを要求したために生じています。このため、設計者がどの荷重によりどの応力が生じたのかを決定しなければなりませんでした。持続荷重は、変化しない荷重としてとらえられ、一方、熱膨張荷重はシステムの運転条件で変化する変位荷重としてとらえられました。持続荷重の決定は単純な部分、すなわち自重、圧力、そしてスプリング据付荷重であり、これらの荷重は運転時の熱膨張においても比較的一定な荷重としてみなされました。

しかしながら、浮き上がり、ギャップなどの非線形拘束がコールド時からホット時になったときに拘束条件を変えた場合に混乱が生じました。このような場合、作用する荷重に対してどの境界条件を用いたらよいかをユーザーが決定しなければなりません。言い換えれば、運転ケースのどの部分が自重荷重によって生じているのか、どの部分が熱膨張によって生じているのかが疑問となりました。

規格は、陽な形で熱膨張応力範囲は既知である運転時とコールド時の間の差の応力として規定されているため、熱膨張の応力計算上のこの質問に対する対応した混乱はありませんでした。

配管応力解析プログラムの開発者へのこの疑問に対する明確な回答は、持続応力計算は運転時の、すなわちホット時の境界条件を使うということでした。これは問題をこじらせ、重ね合わせの法則がもはや有効でなくなってしまいました。言い換えれば、持続荷重 (W+P) と熱荷重 (T) ケースの結果は、両者を足し合わせると運転 (W+P+T) とは同じにならないという結果になってしまいます。先駆的なプログラムである DYNAFLEX では、矛盾しているとは考えられますが、この問題を「熱荷重成分である重量 (thermal component of weight)」という概念を導入しています。

他のソフトウェア、特に、メインフレームの線形解析の世界から開発されたアプリケーションでは、これらの非線形拘束の挙動を近似せざるを得ません。この問題の手法は、運転ケースを解析し、拘束の状態を得て、その結果に応じてモデルを修正するというものでした。したがって、モデル変更後の条件を用いて、荷重ケースを解析することになります。静的な重ね合わせの法則が有効でないことは、ユーザーに告知されることはありませんでした。一方、CAESAR II では、PC上で運転に対する明確な新しい技術を展開し、非線形拘束の影響を直接的に取り込んでいます。これは、それぞれの荷重を独立に考慮することで行われます。拘束の条件は、存在する荷重を元にしたプログラムの実行により、それぞれの荷重ケースで決定されます。

あるユーザーは、実際には 2つの持続荷重ケースがあると断言しています。実際、B31.3 規格の解釈では、持続応力は運転時の拘束条件で判定すると示されています。運転時の拘束条件を用いた持続応力の計算では、いくつかの課題があります。どの縦弾性係数を用いるべきか、どの持続応力を短期荷重ケースとして用いるべきかなどです。

ただ1つの持続ケースがあるべきであり、他は持続ケースではないというのが、CAESAR II の取っている基本的な考え方です。しかしながら、複数の持続ケースの可能性はあります。2つのもっとも明らかなことは、コールド時 (据付時) とホット時 (運転時) の条件に関連します。しかしながら、配管系がコールド時からホット時までの間に、非常に多くの中間的な配管系の荷重状態があります。「正しい」持続荷重ケースが据付時、あるいは運転時に生じるかは、基準枠の問題です。エンジニアが、最初にシステムがコールド時にあって運転状態に伸びるのを見れば、最初のケース、すなわち、自重と圧力が主たる荷重であり、これが持続ケースであると考え、変化分は温度上昇に伴う影響、変形による 2次的な荷重と見なすでしょう。次に、別のエンジニアが同じ配管系を最初に運転ケースから見れば、冷却されてコールド時の条件になります。この場合に、設計者は最初のケース、すなわち運転ケースを持続ケースであり、ホット時からコールド時までの変化を熱膨張係数と見なすでしょう。熱膨張応力範囲はいずれも同じです。さらに、極低温の配管系について関連する事項を検討してみましょう。据付けから運転までの変化は、運転から据付け移行するホット時の変化と同じです。弾性シェークダウンが起こると、コールド時とホット時の熱的に誘起される配管の初期応力の存在によって、問題はさらに不明瞭になります。運転、あるいは据付ケースは、他の中間荷重ケースによって、持続ケースとしてプログラムに整合性があれば正当に選択されます。

コールドスプリングの影響を除けば、参照持続応力として据付ケースを選択すると、熱影響は規格の意図である解析から完全に除くことができます。初期に持続荷重が作用する場合に、これがもっとも妥当な拘束条件を示しています。据付から運転に移行するときに拘束から配管が浮き上がる場合には、これは熱の影響であり、配管規格の配管系がコールド時からホット時への移行による応力の変化としての熱影響と整合します。この見方が明らかに規格による裏付けられたものです。フランスの石油規格では、配管の熱伸びの影響による自重の応力分布は、熱膨張応力であるとしています。たとえば、剛体拘束荷重が 2,000 lbs からゼロへの変化は、バリアブルスプリング荷重が 6,000 lbs から 4,000 lbs に変化するのと大きな違いはないと判断されます。あるいは、他の剛体拘束荷重が、2,000 lbs から 1 lb に変化した場合も同じです。前のケースでは、配管は「過大応力」になれば降伏し、拘束まで沈みこみ、応力が解放されます。この手順は、他のすべての熱膨張応力は配管系において解放されるのと同じです。

我々の解釈方法が正しいと判断しています。しかし、ユーザーによってはこの解釈方法に同意しないこともあるでしょう。したがって、CAESAR  II は個々の仕様による解析を最大限カスタマイズする機能を用意しています。望むのであれば、「ホット時持続 (hot sustained)」 ケースを CAESAR  II の推奨ケースに 2つの荷重ケースを追加することにより解析することができます。これは、配管が最初に伸び、持続荷重が作用することを仮定することで行うことができます。このことは、当然理想的な概念ですが、応力は分離された作用荷重によって分離することができます。したがって、持続荷重は熱膨張の前、あるいは後でのみ作用することができます。次の場合がデフォルトで「ホット時持続」ケースに対しても必要なものです。

デフォルト

新規

L1: W+P1+T1(OPE)

L1: W+P1+T1(OPE)

L2: W+P1(SUS)

L2: W+P1(SUS)

L3: L1-L2(EXP)

L3: T1(EXP)

L4: L1-L2(EXP)

L5: L1-L3(SUS)

新しい荷重ケースの表では、2番目のケースはやはりコールド時の持続荷重です。4番目の荷重ケースは熱膨張荷重ケースを表しています。(L1-L2、あるいは W+P1+T1-W-P1 は、非線形性を考慮した T1 です)。3番目の荷重ケースは、自重のない、圧力のない非線形性を考慮した熱膨張を表しています。

5番目の荷重ケース (L1-L3、あるいは W+P1+T1-T1 は W+P1に等しい) は自重と圧力を熱荷重ケースに作用させたケース、または「ホット時持続」ケースです。上のように配管系を解析する場合には、モデルから任意に削除せず、非線形拘束の実際の影響は考慮されます。そして、重ね合わせの法則は保持されています。

また、別の基礎的な考え方として、「ホット時持続」荷重は: (1) 持続、主たる荷重が作用し、(2) すべてのスプリングがホット時荷重設定となり、(3) 浮き上がりなど非有効になったサポートは、モデルから削除された場合であるとしています。このような解析は、拘束自重 (Restrained Weight) ケースで、最初のハンガー設計荷重ケースにおいて、Keep/Discard 状態を Keep に設定することで行うことができます。これで、この荷重ケースの結果が他の荷重ケースから見えるようになります。拘束重量ケースでは、指定された運転荷重ケースに対して自動的に非線形性を示す拘束を削除して、それぞれのハンガー位置にホット時荷重を作用させます。