コールドスプリング は、施工時に配管にひずみを与えて、運転時に生じるひずみを低減する方法です。このように初期の荷重を与える方法は、一般に運転時の機器に作用する荷重を低減するために用いられます。CAESAR II では、静的荷重ケースも荷重ケース定義の CS 変数を用いてコールドスプリングを設定することができます。
冷間に引っ張る、いわゆるcold Pullでの カットショート (cut short) は、配管系に意図的なギャップを設けて初期引っ張り荷重によって最終的に接続します。冷間時に押し込む、いわゆるcold pushでの カットロング (cut long) は、配管系に意図的な重なりを設けて初期引っ張り荷重によって最終的に接続します。このような初期の隙間や重なりは、それぞれカットショート マテリアル、あるいはカットロング マテリアルとしてモデル化されます。CAESAR II では、荷重ケースで定義された CS荷重が含まれるすべての荷重ケースで、カットショート部分は長さがゼロとなり、カットロングは長さが 2倍になります。
この初期のコールドでの引っ張りは正確に表現することは難しく、特にクリープ領域にある配管系では、長期間の影響はコントロールすること、あるいは、予測することが難しいものです。コールドスプリングを設けた配管系を適切に施工することは難しいため、ほとんどの規格では設定した機器荷重計算に対するコールドスプリング量の 2/3 だけを有効とするように勧めています。B31.3 においても、機器荷重評価における設計値としてのコールドスプリングの上限値は 4/3 となっています。
中間に拘束のない単純な線形の配管系では、コールドスプリングの長さは、機器伸びを無視するとすれば次の式で表されます:
Ci = xLia dT
ここで:
Ci = i 方向のコールドスプリング量; ここで i は X、Y、または Z (インチ)
Li = i 方向の配管長さ (インチ)
a = 雰囲気温度から運転温度における材料の平均線膨張係数 (in/in/°F)
dT = 温度差 (°F)
x = コールドスプリング量 (%)
When x = 0%であれば、コールドスプリングは考慮しない場合になり、運転時に熱ひずみの低減はありません。When x = 100%であれば、運転時の熱ひずみはなく、すべての予測される配管ひずみは配管系の施工時に生じます。If x = 50%であれば、配管ひずみは施工時と運転時に等しく配分されます。このコールドスプリング量 (x) は前述の 2/3 の余裕とは異なるものです。
応力計算には、コールドスプリングによる効果を考慮しません。配管規格による配管系の熱膨張応力は、応力範囲の評価を要求していますので、非線形境界条件がなければ、コールドスプリングは影響しません。このことは次に説明します。コールドスプリングは施工時と運転時の荷重と応力を調整することができますが、熱膨張応力計算における応力範囲は調整することはできません。
コールドスプリングにおける検討事項 (Cold Spring Considerations)
コールドスプリングをとる場合には、次のことに注意が必要です:
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コールドスプリングによる機器ノズルの冷間時反力は、ノズルの許容値を超えてはなりません。
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コールドスプリングの直接的な影響は熱膨張応力にはないことを確認してください。言い換えれば、コールドスプリングを取った運転状態とコールドスプリングのない据付け状態の差として熱膨張応力を計算してはいけません。
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コールドスプリングの値/トレランス (tolerance) が製作公差よりかなり大きいことを確認してください。これは前述の 2/3 と 4/3 チェックに関連しています。
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高温において、コールドスプリングは運転時の機器荷重を低減する場合に運転時の縦弾性係数を用いることで、荷重に著しい影響を与えることがあります。
ソフトウェアは熱膨張応力範囲計算で熱間時の縦弾性係数を使わないことに注意してください。これらの追加的な荷重ケースは、配管系の応力計算ではなく機器荷重の評価として使うことができ、考慮する温度での縦弾性係数とします。
設計コールドスプリングのモデル化
ショートカットとして定義した冷間時のギャップあるいはカットロングとして定義した重なりに対する材料は、CAESAR IIではそれぞれ材料 18 と 19 になります。2つのアプローチがあります。すなわち:
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設計コールドスプリングの全体長さをモデル化する。
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材料特性をコールドスプリングにつながる次の要素の適切な材料に戻します。
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コールドスプリング要素は、設計コールドスプリングの全体長さをモデル化します。
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次の荷重ケースを実行して、コールドスプリングを解析します:
荷重ケース 1 (OPE)
W+T1+P1+CS すべてのコールドスプリング設計値を含む
荷重ケース 2 (OPE)
W+P1+CS 熱荷重以外のすべてのコールドスプリング設計値を含む
荷重ケース 3 (SUS)
W+P1 規格応力チェックに対する標準の持続荷重ケース
荷重ケース 4 (EXP)
L1-L2 規格応力チェックに対する熱膨張荷重ケース
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実際のコールドスプリングの変化として、2/3 と 4/3 の両方を使って、次の荷重ケースで機器運転荷重をチェックします。さらに、追加して荷重変化を定義することもできます。
荷重ケース 1 (OPE)
W+T1+P1+CS すべてのコールドスプリング設計値を含む
荷重ケース 2 (OPE)
W+P1+CS 熱荷重以外のすべてのコールドスプリング設計値を含む
荷重ケース 3 (SUS)
W+P1 規格応力チェックに対する標準の持続荷重ケース
荷重ケース 4 (EXP)
W+T1+P1+0.66 CS (熱間時縦弾性係数を使用)
荷重ケース 5 (OPE)
W+T1+P1+1.33 CS (熱間時縦弾性係数を使用)
荷重ケース 6 (EXP)
L1-L2 規格応力チェックに対する熱膨張荷重ケース
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設計スプリングハンガーの 2/3 をモデル化する。
前の設計からの変更として、設計コールドスプリング長さの 2/3 モデルと次の荷重ケースを用います:
荷重ケース 1 (OPE) |
W+T1+P1+1.5 CS すべてのコールドスプリング設計値を含む |
荷重ケース 2 (OPE) |
W+P1+1.5 CS 熱荷重以外のすべてのコールドスプリング設計値を含む |
荷重ケース 3 (SUS) |
W+P1 規格応力チェックに対する標準の持続荷重ケース |
荷重ケース 4 (OPE) |
W+T1+P1+CS (熱間時縦弾性係数を使用) |
荷重ケース 5 (OPE) |
W+T1+P1+2 CS (熱間時縦弾性係数を使用) |
荷重ケース 6 (EXP) |
L1-L2 規格応力チェックに対する熱膨張荷重ケース |
コールドスプリングの他の適用 (Other Applications for Cold Spring)
機器や拘束に対して荷重を低減するためにしばしば用いられますが、下図に示すように、コールドスプリングはより少ない運転サイクルで熱による配管系のシェークダウンを加速することができます。