配管系での動的荷重 (Dynamic Loads in Piping Systems) - CAESAR II - ヘルプ

CAESAR II ユーザーズガイド

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日本語
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CAESAR II
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CAESAR II Version
13

配管系は、同じ大きさの静的荷重よりも動的荷重である場合にはかなり異なった応答をします。静的荷重は応答するまでに十分ゆっくりとした荷重であり、内部的に荷重が配分された状態になります。したがって、力の平衡条件を保持します。平衡状態では、すべての荷重はフックの法則で解くことができます。すなわち、内力と外力の合計はゼロで、運動はしません。

動的荷重は時間とともに変化します。配管系は内部的に荷重が配分された状態を保つ時間がありません。フックの法則では解くことができず、アンバランスな荷重が生じて、配管系は運動します。内力と外力の合計は必ずしもゼロではなく、内圧は外圧と比べて大きくなったり小さくなったりします。

ソフトウェアは、さまざまな種類の動的荷重を解析するための方法を用意しています。それぞれの方法で、精度と計算要求事項とのトレードオフを最適化しています。動的解析手法として、調和振動解析、応答スペクトルを用いたモーダル解析、時刻歴解析を用意しています。

モーダル (Modal) 固有値に関する情報は、配管系が動的荷重に対する応答の傾向を示しています。配管系のモーダル解析での固有値は、接続する機器の運転振動数と過度に接近していてはいけません。一般的に高い固有振動数は低い固有振動数よりも問題を起こさないでしょう。CAESAR II は配管系のモーダルの固有値の計算と、関連するモード形状のアニメーションを提供しています。

調和振動 (Harmonic) 解析は、往復動圧縮機の流体の脈動解析や回転機の振動解析のような、本質的に繰り返す性質を持つ動的荷重の解析を提供します。これらの荷重は、配管系のモデルの 1つ以上の節点に作用する集中荷重あるいは変位としてモデル化されます。複数の荷重での位相関係を与えることで、これらの荷重あるいは変位の位相角度と関連を持たせることができます。いくつもの荷重振動数での解析は、機器のスタートアップおよび複数の運転モードの解析を容易にします。調和振動解析は、配管系の最大動的応答振幅と、静的解析と同様な出力として節点変位と回転角、局所座標系での断面力、支持荷重、応力を計算します。たとえば、解析結果が節点で X方向に 5.8cm のときに繰り返しの加振力による動的な運動は、配管系のこの節点で +5.8cm から -5.8 cm になることを表しています。応力は繰り返しの応力範囲の片振幅で、あるいは全振幅で示すことができます。

応答スペクトル (Response spectrum) を用いたモーダル解析は、振動数と応答スペクトルという形で特徴づけられる衝撃過渡応答を対象としています。配管系の各振動モードは応答スペクトルの応答値に関係しています。これらのモードごとの応答は、配管系全体の応答を得るために合成されます。これらの解析での応答は持続応力と加算され、短期荷重として配管規格の規定する許容応力と比較されます。スペクトル解析は幅広く適用されています。たとえば、地震時の地盤の動きは変形、速度、あるいは加速度の応答スペクトルとして提供されます。すべてのサポートが定義された地盤の動きにともなって揺れ、配管系はサポートと「一緒に」動くという仮定のもと解析されます。配管系に作用する慣性力の影響となります。地盤の動きを定義する応答スペクトルは3つの全体座標系での方向ごとに異なるでしょうし、サポートグループが異なれば応答スペクトルは異なるでしょう。一様なサポートの動きとは異なり、独立な動きとなるでしょう。そのほかの応答スペクトルの適用対象は、1点での荷重に基づいています。CAESAR II はこのテクニックを有効に活用し、幅広い衝撃荷重の応答解析に用いています。安全弁の吹き出し荷重、ウォーターハンマー荷重、スラッグフロー荷重、弁急閉止荷重などは、配管系のさまざまな節点に作用する 1つの衝撃荷重となります。これらの動的荷重の応答は荷重応答スペクトル法を用いて、安全側に精度よく予測することができます。

時刻歴 (Time history) 解析は、もっとも精度の良い手法で運動方程式を荷重が作用している時間領域で、数値積分により配管系の応答をシミュレーションします。手法はいかなるタイプの動的荷重も解析することができます。しかしながら、正確な解法のため、他の手法と比べて多くのリソース (メモリー容量、CPU速度、処理時間) を必要とします。応答スペクトルを用いたモーダル解析で精度的に問題がないようなケースでは、時刻歴解析は適していません。

配管系での動的荷重の荷重と時刻の履歴は、通常、次の 3タイプのうちのいずれか 1つになります: ランダム (Random)調和振動 (Harmonic)衝撃荷重 (Impulse)。これらの荷重履歴のそれぞれに適切な解析方法があります。これらの荷重履歴と荷重種類について、次に説明します。