CAESAR II の定義では、荷重ケースとはまとめて解析すべき配管系の荷重のグループであり、同時に作用する荷重でもあります。荷重ケースの例として、熱、自重、圧力などの運転荷重があります。他の例として、据付時の自重のみの荷重ケースがあります。
荷重ケースは他の荷重ケースの結果の組み合わせがあります。たとえば、運転荷重と据付荷重との変形差があります。
荷重ケースの内容にかかわらず、一連の出力レポートを作成します。これらは拘束点での荷重、変形、断面力、モーメント、応力です。配管規格による計算方法と許容応力の定義により、CAESAR II では荷重ケースは応力分類ごとに対をなしています。たとえば、運転荷重と据付荷重との変形差による応力は熱膨張応力 (EXP) として分類されます。
配管系の荷重 (Piping System Loads)
基本荷重ケースを構成する配管系の荷重は 基本配管入力 (Classic Piping Input) ダイアログにあるさまざまな入力項目に関連しています。次の表は、ここでの荷重セットの説明です。これらの名称と入力項目が解析で利用されます。
記述 |
名称 |
荷重ケースに関連する入力項目 |
---|---|---|
W |
自重 (Deadweight) |
配管重量 (Pipe Weight), 断熱材重量 (Insulation Weight), リフラクトリー重量 (Refractory Weight), クラッド重量 (Cladding Weight), 流体重量 (Fluid Weight), 剛体重量 (Rigid Weight) |
WNC |
流体を含まない重量 (Weight No fluid Contents) |
配管重量 (Pipe Weight), 断熱材重量 (Insulation Weight), リフラクトリー重量 (Refractory Weight), クラッド重量 (Cladding Weight), 剛体重量 (Rigid Weight) |
WW |
流体重量 (Water Weight) |
配管重量 (Pipe Weight), 断熱材重量 (Insulation Weight), リフラクトリー重量 (Refractory Weight), クラッド重量 (Cladding Weight), 満水重量 (Water-filled Weight), 剛体重量 (Rigid Weight) (通常は耐圧試験として利用) |
T1 |
熱荷重セット (Thermal Set) 1 |
温度 (Temperature) #1 |
T2 |
熱荷重セット (Thermal Set) 2 |
温度 (Temperature) #2 |
T3 |
熱荷重セット (Thermal Set) 3 |
温度 (Temperature) #3 |
T9 |
熱荷重セット (Thermal Set) 9 |
温度 (Temperature) #9 |
P1 |
圧力セット (Pressure Set) 1 |
圧力 (Pressure) #1 |
P2 |
圧力セット (Pressure Set) 2 |
圧力 (Pressure) #2 |
P3 |
圧力セット (Pressure Set) 3 |
圧力 (Pressure) #3 |
P9 |
圧力セット (Pressure Set) 9 |
圧力 (Pressure) #9 |
HP |
耐圧試験圧力 (Hydrostatic Test Pressure) |
耐圧試験圧力 (Hydro Pressure) |
D1 |
強制変位セット (Displacements Set) 1 |
変位 (Displacements) (1st Vector) |
D2 |
強制変位セット (Displacements Set) 2 |
変位 (Displacements) (2nd Vector) |
D3 |
強制変位セット (Displacements Set) 3 |
変位 (Displacements) (3rd Vector) |
D9 |
強制変位セット (Displacement Set) 9 |
変位 (Displacements) (9th Vector) |
F1 |
荷重セット (Force Set) 1 |
荷重/モーメント (Forces/Moments) (1st Vector) |
F2 |
荷重セット (Force Set) 2 |
荷重/モーメント (Forces/Moments) (2nd Vector) |
F3 |
荷重セット (Force Set) 3 |
荷重/モーメント (Forces/Moments) (3rd Vector) |
F9 |
荷重セット (Force Set) 9 |
荷重/モーメント (Forces/Moments) (9th Vector) |
WIN1 |
風荷重 (Wind Load) 1 |
風荷重に対する形状係数 (Wind Shape Factor) |
WIN2 |
風荷重 (Wind Load) 2 |
風荷重に対する形状係数 (Wind Shape Factor) |
WIN3 |
風荷重 (Wind Load) 3 |
風荷重に対する形状係数 (Wind Shape Factor) |
WIN4 |
風荷重 (Wind Load) 4 |
風荷重に対する形状係数 (Wind Shape Factor) |
WAV1 |
波浪荷重 (Wave Load) 1 |
波浪荷重 (Wave Load On) |
WAV2 |
波浪荷重 (Wave Load) 2 |
波浪荷重 (Wave Load On) |
WAV3 |
波浪荷重 (Wave Load) 3 |
波浪荷重 (Wave Load On) |
WAV4 |
波浪荷重 (Wave Load) 4 |
波浪荷重 (Wave Load On) |
U1 |
分布荷重 (Uniform Loads) |
分布荷重 (Uniform Loads) (1st Vector) |
U2 |
分布荷重 (Uniform Loads) |
分布荷重 (Uniform Loads) (2nd Vector) |
U3 |
分布荷重 (Uniform Loads) |
分布荷重 (Uniform Loads) (3rd Vector) |
CS |
コールドスプリング (Cold Spring) |
材料 (Material) # 18 または 19 |
H |
ハンガー初期荷重 (Hanger Initial Loads) |
ハンガー設計または設計済みハンガー (Hanger Design or Prespecified Hangers) |
利用可能な配管系の荷重は 静的解析 (Static Analysis) ダイアログの左に表示されます。
基本荷重ケース (Basic Load Cases)
荷重ケースは入力で定義された 1つ以上の主たる荷重タイプで構成されます。主たる荷重ケースとは、マトリックス式 [K]{x} = {f} の解が必要な荷重ケースです。
例:
-
W+T1+P1+F1 (OPE) はメジャーな荷重ケースです
-
W+P1+F1 (SUS) はメジャーな荷重ケースです
基本荷重ケースは、据付荷重解析 WNC のようにひとつの荷重から構成されています。また、運転荷重解析 W+T1+P1+D1+F1 のように荷重を足したものであることもあります。応力タイプは持続 (SUS)、熱膨張 (EXP)、短期 (OCC)、運転 (OPE)、疲労 (FAT) に分類され、荷重ケースの最後に指定されます。2つの定義例は次のとおりです: WNC (SUS) および W+T1+P1+D1+H (OPE). 各荷重ケースはこのように入力します。
W、T1、D1、WIN1 などの荷重成分は、2.0、-0.5 などのスケールファクターが前に付けられます。同様に、組み合わせ荷重ケースを構築する際は、スケールファクターをつけた荷重ケースが参照の前に付けられます。
ユーザーにとって、次のようなメリットがあげられます。
-
ひとつの荷重が他の荷重にとって複数になる場合、たとえば、運転基本地震 (Operating Basis Earthquake) の 2倍である安全停止用地震 (Safe Shutdown Earthquake) では、基本配管入力 (Classic Piping Input) ダイアログ上はひとつの荷重だけを入力してください。静的解析 - 荷重ケース エディタ (Static Analysis - Load Case Editor) ダイアログでスケールアップかスケールダウンができます。
-
風荷重、あるいは地震荷重のように、方向が全く逆の場合は、基本配管入力 (Classic Piping Input) ダイアログ上ではひとつの荷重だけを入力してください。荷重の前に + または - を付けることで方向を逆転できます。
-
荷重抵抗設計係数 (Load Rating Design Factor - LRDF) 法では、リスクによる係数で個々の荷重成分をスケーリングします。例:
1.05W + 1.1T1+1.1D1+1.25 WIN1
応力の種類は各行のリストから選択できます。
組合せ荷重ケース (Combination Load Cases)
基本荷重ケースの結果は代数的加算法で組み合わされます。これらの代数的加算は、最後の基本荷重ケースに引き続いて行われます。基本荷重ケースの組み合わせは前添え字 L1、L2 などで判別されます。
代数和の荷重ケースは先に解が求まっている主たる荷重ケースの組み合わせです。例:
-
L1-L2 (EXP) は、選択した合成方法を用いた変位、荷重、応力の組み合わせケースです。
-
L4+L6+L8 (OCC) は、選択した合成方法を用いた変位、荷重、応力の組み合わせケースです。
+ および - 記号は、乗数の単項演算子/記号です。主たる荷重ケースまたは組み合わせ荷重ケースの荷重の前に値がない場合、乗数は +1.0 または -1.0 になります。荷重または荷重ケースの前に値があれば、乗数はその値の +値 または -値 になります。
応力の種類として疲労 (FAT) を有するすべての荷重ケースは、想定荷重サイクル数をデータとして持っていなければなりません。
荷重ケースの代数的加算の有効な例を次に示します。
荷重ケース |
|
|
---|---|---|
1 |
W+T1+P1+H+0.67CS (OPE) |
ホット運転条件。スケール係数 0.67 はコールドスプリングに対して配管規格で規定している 2/3 の信頼性をとっています。 |
2 |
W1+P1+H+0.67CS(OPE) |
コールド運転条件で、コールドスプリングをとっています。 |
3 |
W1+P1+H(SUS) |
従来の持続荷重ケース。 |
4 |
WIN1(OCC) |
風荷重ケース。これは平均の風荷重 1X、最大 2X で、正の方向、負の方向を表しています。 |
5 |
L1-L2(EXP) |
従来の熱膨張ケースで、コールドからホットを表しています。DS よりも L を荷重に用います。 |
6 |
L1-L2(FAT) |
同じケースですが、10,000回のサイクル数での疲労評価を行います。 |
7 |
L1+L4(OPE) |
ホット運転荷重で平均風荷重を正方向に作用する荷重ケースです。 |
8 |
L1-L4(OPE) |
ホット運転荷重で平均風荷重を負方向に作用する荷重ケースです。 |
9 |
L1+2L4(OPE) |
ホット運転荷重で最大風荷重を正方向に作用する荷重ケースです。 |
10 |
L1-2L4(OPE) |
ホット運転荷重で最大風荷重を負方向に作用する荷重ケースです。 |
11 |
L2+L4(OPE) |
コールド運転荷重で平均風荷重を正方向に作用する荷重ケースです。 |
12 |
L2-L4(OPE) |
コールド運転荷重で平均風荷重を負方向に作用する荷重ケースです。 |
13 |
L2+2L4(OPE) |
コールド運転荷重で最大風荷重を正方向に作用する荷重ケースです。 |
14 |
L2-2L4(OPE) |
コールド運転荷重で最大風荷重を負方向に作用する荷重ケースです。 |
15 |
L3+L4(OCC) |
短期応力状態で、持続荷重と平均風荷重が作用する荷重ケースです。 |
16 |
L3+2L4(OCC) |
短期応力状態で、持続荷重と最大風荷重が作用する荷重ケースです。 |
17 |
L9+L10+L11+L12(OPE) |
最大拘束荷重ケースです。組み合わせオプションは MAX である必要があります。 |
CAESAR II は解析用に 999 の荷重ケースを受け付けます。さらに多くの荷重ケースが必要になる場合には、モデルを新しいファイルにコピーして追加の荷重ケースを指定して解析してください。