KHK は日本 高圧ガス保安協会で行政とは独立した組織です。KHK は高圧ガス設備等の耐震設計指針を発行しています。
CAESAR II は KHK の指針のうち、配管系の地震荷重入力を支援する 地震荷重ウィザード (Seismic Wizard) を組み込んでいます。ユーザーは 地震荷重ウィザード (Seismic Wizard) を使って地震荷重 (G) を重力加速度との比である震度として計算することができます。
KHK 耐震設計では配管支持点の相対的な変位、必要に応じて液状化による地盤沈下、側方流動などの地盤変状も計算する必要があります。耐震設計に必要なすべての荷重を定義します。
KHK レベル 1
レベル 1 耐震性能評価は設備の供用期間中に想定される確率の高い地震動です。設備の耐震性能としの保有すべき能力は、有害な変形が生じず高圧ガスの漏洩のないことと、地震中も地震後も機能が維持されることです。
KHK レベル1 耐震性能評価は次に示す応力タイプで行われます。
K1P
K1P 応力タイプは高圧ガス保安法 (HPGSL) と石油学会規格 (JPI) で要求される 1次の長手方向応力です。圧力、重量、設計地震力(重力加速度との比である震度 (G) による長手方向応力になります。
K1P の応力計算式と許容応力については、CAESAR II クイックリファレンスガイド の 海外国際規格応力 を参照してください。
CAESAR II は他の規格では K1P 応力タイプを短期応力タイプ (OCC) とみなします。
K1SR
K1SR 応力タイプは高圧ガス保安法 (HPGSL) と石油学会規格 (JPI) で要求される 2次の繰り返し応力範囲です。地震荷重 (重力加速度との比である震度 G) と配管支持点の相対変位による繰り返し応力範囲です。
K1SRの応力計算式と許容応力については、CAESAR II クイックリファレンスガイド の 海外国際規格応力 を参照してください。
CAESAR II は他の規格では K1SR 応力タイプを熱膨張応力タイプ (EXP) とみなします。
KHK レベル1 耐震性能荷重ケース例
荷重ケース |
応力 |
合成 |
状態 |
|
---|---|---|---|---|
L1 |
W+T1+P1 |
OPE |
NA |
通常運転条件 |
L2 |
W+P1 |
SUS |
NA |
持続荷重ケース |
L3 |
W+T1+P1+U1 |
OPE |
NA |
通常運転条件に設計震度で表した慣性力が作用した荷重ケース |
L4 |
W+T1+P1+U1+D1 |
OPE |
NA |
通常運転条件に慣性力と支持点相対変位が作用したケース |
L5 |
L3-L1 |
OCC |
代数和 (Algebraic) |
慣性力のみの荷重ケース |
L6 |
L4-L1 |
OCC |
代数和 (Algebraic) |
慣性力と支持点相対変位のケース |
L7 |
L2+L5 |
K1P |
スカラー (Scalar) |
短期 1次の長手方向応力評価用荷重ケース |
L8 |
2L6 |
K1SR |
代数和 (Algebraic) |
短期 2次の繰り返し応力範囲評価用荷重ケース |
異なる方向の地震荷重も同様に定義し、荷重ケースが追加されます。
KHK レベル 2
レベル 2 耐震性能評価は設備の供用期間中に想定される確率の低い高レベルの地震動です。設備の耐震性能としの保有すべき能力は高圧ガスの漏洩のない安全性が維持されることで、配管系の塑性変形を許容しています。KHKレベル 2 耐震性能評価は慣性力と配管支持点の相対変位に加えて、必要に応じて液状化による側方流動などの地盤変状も考慮する必要があります。
KHKレベル 2地震動のような高レベルの地震荷重が配管系に作用する場合、直管が塑性化するよりも前にベンドが塑性化します。レベル 2 耐震性能評価では、ベンドの塑性化を等価なたわみ係数で表します。この評価方法ではベンドの角度が大きくなる場合、あるいは小さくなる場合のその都度繰り返し計算が必要になります。地震荷重に対して、ベンドの変形角度の変化が規定された制限値よりも大きければ塑性化の程度を示すベンドの剛性を修正し、収束公差範囲になるまで計算をやり直します。収束したベンドの変形角度を許容値と比較し、合格・不合格を判定します。ソフトウェアは他のレポートは別にベンドレポートとしてこの結果をレポートします。
ベンドの塑性化を解析するには繰り返し計算が必要になるため、ソフトウェアは KHK L2 を基本荷重ケースとして扱います。複合荷重ケースでこの基本荷重ケースの組合せはできません。
KHK レベル 2耐震性能評価は次に示す応力タイプで行われます。ユーザーはこれらの荷重ケースから KHK レベル 2耐震性能評価を行うための荷重ケースを作成します。
K2P
K2P 応力タイプは高圧ガス保安法 (HPGSL) と石油学会規格 (JPI) で要求される 1次の長手方向応力です。圧力、重量、設計地震力(重力加速度との比である震度)による長手方向応力になります。
K2P の応力計算式と許容応力については、CAESAR II クイックリファレンスガイド の 海外国際規格応力 を参照してください。
CAESAR II は他の規格では K2P 応力タイプを短期応力タイプ (OCC) とみなします。ソフトウェアは他の規格では極限の荷重特性から許容値をゼロとします。
K2SA
K2SA 応力タイプは高圧ガス保安法 (HPGSL) と石油学会規格 (JPI) で要求される2次の繰り返し応力の片振幅 (amplitude) です。応力の方振幅は地震荷重 (重力加速度との比である震度) と配管支持点の相対変位)による繰り返し応力の片振幅です。ユーザは 2次の繰り返し応力の片振幅荷重ケースをこの K2SA 応力タイプで定義します。
K2SA の応力計算式と許容応力については、CAESAR II クイックリファレンスガイド の 海外国際規格応力 を参照してください。
CAESAR II は他の規格では K2SA 応力タイプを熱膨張応力タイプ (EXP) とみなします。ソフトウェアは他の規格では極限の荷重特性から許容値をゼロとします。
K2SR
K2SR 応力タイプは高圧ガス保安法 (HPGSL) と石油学会規格 (JPI) で要求される 2次の繰り返し応力範囲です。応力範囲は地震荷重 (重力加速度との比である震度) と配管支持点の相対変位による繰り返し応力範囲です。ユーザーは 2次の繰り返し応力範囲荷重ケースをこの K2SR 応力タイプで定義します。
K2SR の応力計算式と許容応力については、CAESAR II クイックリファレンスガイド の 海外国際規格応力 を参照してください。
CAESAR II は他の規格では K2SR 応力タイプを熱膨張応力タイプ (EXP) とみなします。ソフトウェアは他の規格では極限の荷重特性から許容値をゼロとします。
K2L
K2L 応力タイプは高圧ガス保安法 (HPGSL) と石油学会規格 (JPI) で要求される液状化による地盤沈下、側方流動などの地盤変状による応力です。地盤変状によるベンドの許容塑性ひずみは 5%から換算されたベンド変形角度になっています。
K2L の応力計算式と許容応力については、 CAESAR II クイックリファレンスガイド の 海外国際規格応力 を参照してください。
CAESAR II は他の規格では K2L 応力タイプを熱膨張応力タイプ (EXP) とみなします。ソフトウェアは他の規格では極限の荷重特性から許容値をゼロとします。
レベル2 耐震性能評価における許容値一覧
応力タイプ |
OPE |
地震荷重 |
許容値 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
P |
W |
T |
U |
D |
||
K2P |
ü |
ü |
ü |
ベンド: qa=1.14/h0.46 その他: 2S |
||
K2SA |
ü |
ü |
片振幅: 塑性ひずみ-2% ベンド: qa=1.14/h0.46 その他: 2Sy |
|||
K2SR |
ü |
ü |
範囲: 塑性ひずみ-4% ベンド: qa= 2x1.14/h0.46 その他: 2x2Sy |
|||
K2L |
ü |
範囲: 塑性ひずみ-5% ベンド: qa=2.43/h0.46 その他: 4Sy |
KHK レベル 2 耐震性能評価例
荷重ケース |
応力 |
状態 |
|
---|---|---|---|
L1 |
W+T1+P1 |
OPE |
通常運転条件 |
L2 |
W+P1 |
SUS |
持続荷重ケース |
L3 |
W+T1+P1+U1 |
K2P |
通常運転条件に設計震度で表した慣性力が作用した荷重ケース |
L4 |
U1+D1 |
K2SA |
慣性力と支持点相対変位が作用した片振幅荷重ケース |
L5 |
D2 |
K2L |
地盤変状荷重ケース |
次の例に示すように、ユーザーは K2SR を使って応力範囲として定義することもできます。この例では、片振幅の荷重を 2倍して範囲としています。ユーザーはこの荷重ケースを上に示した荷重ケース例に追加することができます。
荷重ケース |
応力 |
状態 |
|
---|---|---|---|
L6 |
2U1+2D1 |
K2SR |
2次応力範囲として、慣性力と支持点相対変位が作用した両振幅の荷重ケース |
異なる方向の地震荷重も同様に定義し、荷重ケースが追加されます。