クリープは機械的応力下の材料に生じる緩やかな永久変形です。クリープ現象は長期間の高温状態で材料の降伏点以下の比較的高い高応力が作用しているときに生じます。発電設備のボイラー配管が高温クリープ荷重を受ける代表的な例です。
材料 (Materials)
高温下では、クリープが材料の許容値を決める際の主たる要因になります。クリープで支配される許容値は、時間依存の許容値と呼ばれ、荷重作用時間がパラメータになります。
ASME B31.1 と ASME B31.3 の材料の許容値は、デフォルトでは 100,000時間の値を基にしています。
EN-13480 の材料のクリープ寿命は、次の例に示すように変化します。CAESAR II では材料名にクリープ寿命を含むようになっています。
CAESAR II の材料番号 406 の材料である 1.0345S-16-100 は次に示す材料の許容値になります:
-
16 - 最大厚さが16 mm であることを示しています。
-
100 - 100,000時間に対する許容値であることを示しています。これが CAESAR II のデフォルトになります。
CAESAR II の材料番号 406 の材料である 1.0345S-16-200 は次に示す材料の許容値になります:
-
16 - 最大厚さが16 mm であることを示しています。
-
200 - 200,000時間に対する許容値であることを示しています。
対応するクリープ作用時間の材料の許容値がない場合には、必要な時間に対する材料データベースをカスタム材料として登録する必要があります。
計算 (Calculations)
ソフトウェアは EN-13480 式12.35-1 に準拠してクリープ応力を計算します:
s5 = Pcdo/4en + 0.75iMA/Z + 0.75iMC/3Z £ fCR
ここで:
Pc = 計算に用いる圧力 (SUS)
MA = 自重、その他の機械的荷重による合成モーメント (SUS)
MC = 熱膨張、変動荷重による合成モーメント (EXP)
fCR = ホット時許容応力
CAESAR II では、クリープ応力 (CRP) は持続荷重ケース (SUS) と 1つの熱膨張荷重ケース (EXP) のスカラーでの組み合わせになります。式の最初の2項は持続荷重による応力であり、第3項は熱膨張荷重による応力です。
この式に準拠してクリープ応力を計算する場合には、荷重ケースエディタ (Load Case Editor) の例に示すように、荷重乗数を指定する必要はありません。荷重乗数を指定した場合は、その乗数をスケール ファクターとして考慮しクリープ応力が計算されることに注意してください。
ソフトウェアは他の多くの配管規格が参照している EN-13480 のクリープ応力計算を行います。
SIF の計算方法 (SIF Methodology)
CAESAR II は EN-13480 クリープ評価における単一 SIF と複数の SIF を用いる方法のいずれも考慮できます。複数の SIF を用いる方法では、次のとおりになります:
SbA = [(iiMi)2+(ioMo)2]1/2/Z. (持続荷重ケースによる 1次荷重に対して)
SbC は熱膨張荷重ケースの合成モーメントの全振幅であることを除いて SbA と同様に定義されます。
s5 = Pcdo/4en + SbA + SbC/3 < fCR
荷重ケースエディタ (Load Case Editor)
CAESAR II はクリープ荷重ケースを推奨荷重ケースとして作成することはありません。ユーザが 応力タイプとして CRP を使ってクリープ荷重ケースを作成してください。必要とされるそれぞれのひずみ範囲からクリープ応力範囲を定義することができます。
次に示す荷重セットは 2つの圧力 (P1 と P2) と 2つの温度 (T1 と T2) があり、T2 はクリープ範囲にあるとしています。
-
2つのクリープ荷重ケース (L9 と L10) は、運転条件 T2 での P1 と P2 に対応しています。
-
最後の荷重ケース (L11) はすべての CRP ケースにおいて最大応力を計算するための最大の組み合わせケースです。
荷重 |
|
|
応力 |
合成 |
---|---|---|---|---|
L1 |
W+T1+P1 |
OPERATING CASE CONDITION 1 (運転条件1) |
OPE |
未定義 |
L2 |
W+T2+P2 |
OPERATING CASE CONDITION 2 (運転条件2) |
OPE |
未定義 |
L3 |
W+T2+P1 |
OPERATING CASE CONDITION 3 (運転条件3) |
OPE |
未定義 |
L4 |
W+P1 |
SUSTAINED CASE CONDITION 1 (持続荷重ケース1) |
SUS |
未定義 |
L5 |
W+P2 |
SUSTAINED CASE CONDITION 2 (持続荷重ケース2) |
SUS |
未定義 |
L6 |
L1-L4 |
EXPANSION CASE CONDITION 1 (熱膨張ケース1) |
EXP |
代数和 (Algebraic) |
L7 |
L2-L5 |
EXPANSION CASE CONDITION 2 (熱膨張ケース2) |
EXP |
代数和 (Algebraic) |
L8 |
L3-L4 |
EXPANSION CASE CONDITION 3 (熱膨張ケース3) |
EXP |
代数和 (Algebraic) |
L9 |
L5+L7 |
Creep case between SUS L5, EXP range from L5 to L2 (クリープケース、SUS L5 とEXP (L5 to L2 全振幅)) |
CRP |
スカラー (Scalar) |
L10 |
L4+L8 |
Creep case between SUS L4, EXP range from L4 to L3 (クリープケース、SUS L4 とEXP (L4 to L3 全振幅)) |
CRP |
スカラー (Scalar) |
L11 |
L9, L10 |
最大クリープケース (Max creep case) |
CRP |
最大 (Max) |