ジャケット管のモデル化にはいくつかの方法があります。 いちばんわかりやすい方法は、基本配管入力 (Classic Piping Input) ダイアログでジャケットを作成することです。 2番目の方法は、コア配管の入力ファイルを複製して、CAESAR II の取り込み (include) 機能で2つのモデルを結合する方法です。 もうひとつの方法は、リスト処理機能を使って、必要な要素を複製する方法です。 最後の方法をここでは説明します。
ジャケット管のモデリングを始めるには、編集 > リスト (Edit > List) を選択します。 リストオプション (List Option) ダイアログが表示され、ここにすべての入力データが表示されています。 要素 (Elements) タブを選択して、下図のような要素のリストとそれに関連する相対座標の一覧を表示します:
ジャケット管の前半は、以下の手順でコアの配管を複製します。 複製の範囲はポンプから弁までです。
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要素 1105-1110 の行をクリックします。
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Shift キーを押して、要素 1580-1590 の行をクリックします。 これは弁の手前の要素です。
選択した 2つの行の間がすべてハイライトされます。
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ハイライトした箇所で右クリックして、複製 (Duplicate) を選択します。
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ブロックの複製 (Block Duplicate) ダイアログで、同一 (Identical) を選択します。
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ブロックを複製する位置として、入力の端点 (At End of Input) を選択します。
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節点の増分 (node increment) は 1000 と入力して、OK をクリックします。
CAESAR II すべての節点番号を 1000 ずつ増分してブロックを複製します。 節点1105 から 1590 までの配管と同じ配管が、節点 2105 から 2590 までとして作成されます。
新しく作成した配管に対して 3つの変更を行い、ジャケット管とします。 まず、外径、肉厚を 12in, Sch 40 とします。 リスト編集 (List Editor) で、要素 2105 - 2110 を探して新しい値を入力できます。 次に、ジャケット管の温度、圧力、断熱材、流体重量を指定します。 最後に、すべてのジャケット管のベンド半径をロングからショートに変更します。 最も簡単な変更方法は、リストオプション (List Options) ダイアログの ベンド (Bends) タブを選択して、ベンド (Bends) リストを開くことです。 次に、ベンド節点2120 の半径を Long から 12.0 インチに変更します。 この変更は続くすべてのベンドに対しても行います。
上記の変更をすべて終えたら、ジャケット管の最初の半分が完成したことになります。 ジャケット管とコア配管のグラフィックスを重ねてみることができます。
2つのモデルは正しく配置されてはいますが、お互いに接続されていません。 今までのところ、いくつかの配管を複製したにとどまっています。 CAESAR II からすれば、同じ入力ファイルに 2つの接続していない配管系がただ存在しているだけです。 グラフィックスモジュールは、同じ位置から始まったこのような不連続なシステムを表示します。したがって、ジャケット管とコアの配管を正しく準備できるわけです。
次のステップは、ジャケット管とコアの配管を正しく接続して、外部の拘束を設定することです。 ジャケット管とコア配管を接続するには、実際の配管系で 2つを接続するスペーサーをモデル化します。 この接続は、CAESAR II では接続節点 (CNodes) を用いた拘束とします。
接続節点 (CNode) は、自由度と関連しています。 接続節点が 2つの節点を Y方向に接続するとき、2つの節点は Y方向に同じ動きをします。 接続節点 (CNodes) を使うことにより、2つの節点を「他の世界」を介さずに拘束することができます。
ジャケット管とコアの配管を接続するモデル化をポンプから始めます。 基本配管入力 (Classic Piping Input) ダイアログで、拘束 (restraint) に入力していきます。 節点1105 と接続節点 (CNode) 2105 を 固定 (anchor) として拘束します。 これは節点1105 と 2105 の 6自由度すべてを共有します。
次に、節点1110 に 2つの拘束を追加します。 どちらも 接続節点 (CNode) を 2110 とし、ひとつは Y方向、もうひとつは Z方向を拘束します。 これら 2つの拘束は、ジャケット管とコア配管のスペーサーをモデル化しています。
スペーサーにはギャップを設けません。 実際には、管とスペーサーの間には小さなクリアランスがありますが、このクリアランスを数値的にモデル化すると非常に非線形の高い解析が必要となってしまいます。 スペーサーのあるギャップ付きのモデルは、収束に関する問題を生じて解が得られない可能性があります。
節点1110-1120 に最初のエルボを定義します。 ここでは、次のように 4つの拘束を追加します:
節点1115 には、接続節点 (CNode) 2115 に Y方向と Z方向の拘束
節点1120 には、接続節点 (CNode) 2120 に X方向と Z方向の拘束 これらの拘束は、管軸に垂直です。 また、節点2115では、外部拘束 +Y とします。 この拘束は、節点2115 のスプレッドシートで追加します。
同様にして、残りのスペーサーについて拘束を追加します。
完成した入力ファイルの例である JACKET._A が、[CAESAR II Directory]\Examples フォルダーにあります。
節点1590 に達しましたら、接続節点 (CNode) 2590 と固定点 (anchor) で接続します。 節点2525 と 2575 にはスプリングハンガーを追加します。
ポンプと弁における固定点 (anchor) を除いて、ジャケット管とコアの配管のすべてのスペーサーは、2つの管軸直角の拘束で接続節点を介してモデル化されています。 では残りの4つの自由度はどのように拘束すればよいのでしょうか? このモデルが、剛体運動をして勝手に動いてしまわないようにするには、どうすればよいでしょうか? これらの問題は次の2点のことを考えれば解決します。 まず、ジャケット管は連続してコアの配管にポンプから弁までつながっています。 両端はすべての自由度が接続しています。 次に、並進方向の拘束は明らかに 3つの並進方向の動きを拘束します。 さらに、これらの拘束は、ジャケット管が連続であるため回転も拘束します。
モデルが構築できたら必ず、モデルが、あるいはモデルの一部が剛体運動をしないことを確認してください。 そのようなモデルは特異な剛性マトリックスとなり、解が得られません。 そのような解の得られないモデルの例として、中央にヒンジのある片持ち梁が挙げられます。
データ入力のここまでの時点で、エラーチェック (Error Check) をクリックして、モデルのエラーチェックを行ってください。 CAESAR II は、入力を保存して、エラーと警告 (Error and Warnings) ダイアログに結果をレポートします。 報告されたエラーは、後半のジャケット管をモデル化する前に修正しておいてください。